かっこいい名刺

わたしの父は先月、89歳の誕生日を迎えました。


つい数年前までNPO法人の会長をしており、週に一度はスーツを着て電車に乗って、皇居近くの事務所まで通勤していました。スーツ姿の父はいつもの普段着の父とはまた違った雰囲気でとてもダンディだったのを思い出します。


そんな父、わたしがまだ実家にいた頃だったと思うので20年ほど前でしょうか、ある時から自分の名刺に一切の肩書を書かなくなりました。


「こんな名刺作ったんだ」と言って見せてくれた名刺には、堂々とした自筆の楷書で名前のみが縦書きに印字されていました。


それを見た時、自分の父親ながら「うぉー、かっこいい」と思ったものです。


元◯◯とか書こうと思えばそれなりの肩書きを持つ父ですが、一切なし。すっきり名前一本で勝負です。


社会的な地位や肩書、名声や実績。人生にはそれらのものを築き上げ、積み上げてゆくべき時間がまず長くあって、それはそれで尊いし必要なこと。でも最終的にはそのいずれも墓場までは持っていかれません。


ある程度の年齢になったらそれらみんなきれいに削ぎ落として、あくまで「自分」としてシンプルに生きられたら素敵だな、と思います。


それは、肩書やら過去の名声やらはあるかもしれないけどそういうの全部言わなくとも「自分は自分です」、という究極の自分自身への自信がないとできないわけで、それができるということはつまりは一番強い在り方のように思えるからです。


自分はまだまだですが、父を見習って人生の後半はシンプルに身軽に「自分」一本勝負で生きられるよう、精進を重ねてゆきたいと思います。

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