ポートランドの長い冬

数日におよぶ停電まで巻き起こしたポートランドの雪。ようやく道路の雪も溶け始め、白く積もった雪の下からは緑色の芝生やシダの葉、重くのしかかる雪をものともせずに咲き続けたクリスマスローズなどの冬の花が再び顔を出し始めました。


ポートランドに暮らすようになってから、日本と同じような四季の移り変わりがあるせいか、自然の細やかな表情に目が留まるようになりました。それは、子供の頃に持っていた自然をみつめる眼差しだったように思います。子供の頃というのはつまりもう、ウン十年も前のこと。随分と長いあいだ、たくさんのことを見過ごしながら生きていたのだな、と我ながら恥ずかしくもあり、それも仕方のないことだったようにも思えます。


もうひとつ。この場所で、この季節を最大限に味わいたい、という思いが芽生えたのは、引越しを繰り返すようになってからのことです。同じ場所に長く暮らしていると、春も夏も秋も冬も、この季節はまた来年もその先も、永遠にやってくるような気がして、自然の匂いや移り変わりを十分に味わい尽くそうという意識は湧いてきませんでした。


わたしは今年、ガタゴト電車に揺られながら車窓の外に広がる満開の桜を見ることはないし、いつから春になったのか分からないぐらい年中あたたかいハワイのビーチに寝そべりながらぼんやり”日本はもう春かぁ”と思うことも、カリフォルニアの青い空に妙にマッチした紫色のジャカランダの花を見上げることもありません。


そう思うと、今この眼の前にある灰色のポートランドの長い冬も、決して見逃すわけにはいかない、という気持ちになるのです。


今ある場所で、目の前にある、手を伸ばせば触れられる、これからはそんな物たちを大切に暮らしてゆきたい。ポートランドの長い冬は、まだしばらく続きそうです。

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