夕焼け新聞12月号掲載『今年一番の変化』

ハワイ島からブログ発信中。こちらは米国オレゴン州月刊コミュニティ紙『夕焼け新聞』2023年12月号に掲載されたコラムの全文です。

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2023年がもうすぐ終わろうとしています。ホリデイシーズン真っ只中で少し胃もお疲れ気味でしょうか。

私自身の今年一番の変化と言えば、2月初旬にコロナウィルスに感染したのをきっかけに、アルコール類を一切飲まなくなったことがあります。感染する一日前まで「お酒をやめよう」と思ったことはなかったので、不思議といえば不思議です。

アルコールを摂らなくなったことが影響しているのか、味覚の方にもいくつか変化が表れました。先ず、これまで以上に甘いもの好きになりました。そしてその後、牛肉と豚肉を好んで食べなくなりました。「食べない」と決めて食べなくなったというよりも、「食べたくないから食べないでおこう」という感じで。

そして実際に食べない期間がしばらく続き、ある時期になって「あれ、食べなくて全然平気だな」と頭で認識する段階を経て、「特に食べる必要ないな(なくていいな)」という感覚になってゆきました。振り返ると、アルコールも同じような過程を経て今に至り、今ではすっかり「飲まない人」です。

私は、夕飯の席では父と母が先ずはビールで乾杯をし、食卓には複数のお惣菜が並ぶような家庭で育ちました。そのおかげもあって私自身、食べ物の好き嫌いは一切なく、なんでも食べ、お酒も楽しく嗜んでこれまで生きてきました。

そんな私にとって、この「◯◯を食べません」とか「飲みません」という世界は非常に新鮮で、レストランで「ノンアルコールカクテルはありますか?」と聞く時や、「私、牛肉と豚肉は食べないんです」と誰かに言う時など、未だにちょっとドギマギしてしまいます。

こういった、「ある」が当たり前でこれまで生きてきたし「ない」世界のことなんて特に想像もしてこなかったけれど、ふとしたきっかけで「ない」にしてみたら結構それもありだったね、ということは飲食の習慣に限ったことではなく、きっと様々な対象に当てはまることなのだろうと思います。

私達は普段、何気なく口に入れたり、身につけたり、所有したりしているけれど、あるきっかけでそれを手放してみたら別になくても平気だったね、というものを溢れるほど抱えながら暮らしているのだな、ということを改めて感じました。

それは決して悪いことではありません。それこそが「豊かさ」の象徴でもあります。ただ私にとって2023年は「あ、これいらないかも」とひとつずつ手放し始めた、そんな年で、何かひとつのシフトチェンジが起こった年だったなと感じています。

車のギアで例えると、もっぱらD(ドライブ)で走り続けてきたけれど、これまでただ横目で眺めてきたN(ニュートラル)というものが一体全体何なのかを使ってみて初めて理解した、そんな感じです。

かえって分かり難くなってしまったかもしれないので今一度一言で言い換えると、これまでの自分にとっての常識を新鮮な目で見ることができるようになった。2023年は私にとってそんな年でありました。

ハワイの伝説に「The Bowl of Light 光の器」というお話があります。その伝説によると、我々は生まれた時から自分の中にBowl of Light(光の器)を持っていて、その器の底からはまばゆいばかりの光が放たれています。そしてその完璧な光が入った器が、すべてのことを我々に教えてくれます。

しかし我々は成長するにつれ、「なにかがおかしい」と感じ始めます。友達、同僚、家族、そんな人達の中で自分の行動が「なにかおかしい」のではないか、と嫌な感情が湧いてきます。そして「嫌だな」と思ったその感情の石が、器の中にコトンと入ります。

またある時は悩みごとができます。するとその悩み事を通した経験の石がまたコトンと器に入ります。器はだんだん重たくなって、たくさんの石が器の底を覆って光はほとんど見えなくなってしまいました。

そんな時、ハワイのクプナ(知恵を授けてくれる人、年配者)はこう教えてくれます。「器を逆さにしてごらんなさい」「問題があるなら、器を逆さにして全部捨ててしまいなさい」と。

器に石をコトンと入れたのは自分で、誰も私にその石を持っていてとは言っていない。自分で入れて自分で持ってしまっているだけ。そしていつの間にか、光が見えないぐらい器は石でいっぱいになってしまった。

その石を捨てることでまた光が見えるようになってくる。この光は見えないと思っているだけで、ずっと器の下にある。あなたの中の光る器をずっと輝かせておきましょう、とそういうお話です。

私たちは様々な体験、そして周りの人や環境からの影響を通して自分にとっての「常識」や「当たり前」というものを築き、そこから外れている自分や時には相手を否定し、「何者かにならなくては」と今の自分のままでは十分ではないように感じ、持たなくてもいい罪悪感や恥の意識までも身にまとって生きてしまっているのかもしれません。知らず知らずのうちに、そうとは気付かずに。

これからは、少しでも重たい器を軽くして生きていきたい。長い年月をかけて自分で自分の器に入れてきてしまった石を、ひとつひとつ取り除いて光に戻ってゆきたい。体と心は繋がっているとは言いますが、体の変化を大きく感じた2023年、そんなことを思いながら幕を閉じようとしています。


トゥシグナント 知佐子 

chisakolife.com

東京都出身、2013年米国に移住。オアフ島、ロサンゼルス、ポートランド(OR)を経て現在はハワイ島ヒロ在住。マナアートハワイ manaarthawaii.com・ハワイ島ヒロ自宅でのAirbnb airbnb.com/h/hilosunrisesuite 

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