夕焼け新聞新年特大号掲載『陰と陽』

米国オレゴン州月刊コミュニティ紙『夕焼け新聞』2023年新年特大号に掲載されたコラムの全文です。

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ニュースなどでご覧になった方も多いかと思いますが、ハワイ島にある5つの火山のうちのひとつ、マウナロアが11月27日に噴火。わたしが暮らすヒロの自宅からも雲がかかっていなければ噴煙が見え、日が暮れて辺りが暗くなるとマウナロアの方角の空が真っ赤に染まる日が幾日か続きました。

星空に燃えるマウナロア

ハワイ島は「島全体がパワースポット」と呼ばれるほどの強い気(エネルギー)が流れる場所と言われています。マウナロア噴火後に旧サドルロード沿いに設置された展望エリア*を夜明け前に訪れ、なだらかな斜面の上を這うように流れる真っ赤な溶岩を初めて肉眼で見て来ました。展望エリアはちょうどマウナロアとマウナケア(標高4,207Mのハワイ諸島で最も高い山)の狭間に位置しており、だんだんと夜が明けて空が紫色に染まり始めた頃にふと後ろを振り返ると、そこには美しいマウナケアのシルエットがありました。驚くことに、まるでタイミングを合わせたかのようにマウナロア噴火の数日後にマウナケアの山頂付近では降雪がありました。あたかも、大地から溢れ出る溶岩と天空から舞い降りる雪の共演です。そんな魔法みたいなことが起こる場所、大地と天空からのすさまじいほどのエネルギーが注がれる場所、それこそがハワイ島です。

溶岩を一目見ようと展望エリアにやって来た人々はダウンコートを着たり、毛布にくるまったりしてもはやそこは“常夏ハワイ”の光景ではありません。温度計を見ると42℉(6℃)の表示。半分雲の上のような標高で冷たい空気に包まれながら、右には真っ赤に燃えるマウナロア、左にはうっすら雪化粧のマウナケアに挟まれたその場所に立っていると、この世のものとは思えないような時間と空間の中に浸っているような気分でした。

地上と天空、火と水、熱と冷。マウナロアとマウナケアから感じるこれらのキーワード、どこかで耳にしたような?と思ったら、最近読んだ本『気のはなし~科学と神秘のはざまを解く~』(若林理砂著、ミシマ社)で触れられていた中国の陰陽のお話でした。陰陽説ではその昔、宇宙は混沌とした気(エネルギー)の状態であったとされます。上も下も、右も左も無く、すべては1つ。比べるものもありません。そこからやがて、軽いものは上へ上へと昇り、重いものは下へ下へと降り、2つの気の状態へ分かれていきます。それが「陰」と「陽」の始まり。陰陽説は、簡単に言えば「万物全てのものは陰と陽で構成される」と考える中国古代の思想です。

陰陽説についてここまでの知識はありましたが、今回この本を読んで初めて知りおもしろいなと思ったのは、「陰陽にはグラデーションがある」という部分でした。陰陽はもともと丘の日陰と日向のことを表す言葉だったそうで、太陽が移動すると日陰と日向は丘の向こうとこちらで入れ替わります。「時間と共に日陰と日向が入れ替わるため、固定的ではなく流動性のあるイメージが陰陽の重要な考え方である」「上下の間、昼夜の間、表裏の間など、陽に陰成分、陰に陽成分が入るし、その割合もシームレス」「陰陽はどちらが良い悪いというものではなく、両方そろって世界が成り立つ」と解説されています。このように陰陽説は「万物は陰と陽の2つに分けられる」けれども、そこには「グラデーション」という無数の状態が内包されている、という説のようです。ここで一瞬、無数のグラデーションが存在することを前提とするのであれば最初から2つに分ける必要はあったのだろうか?という疑問が生まれましたが、それだと「混沌」になってしまうわけだ、と思い直しました。一切の分類がない状態は混沌で、分類があった上でのグラデーション(無数の可能性)はもはや混沌ではなく調和である、ということなのだと理解しました。

ハワイ主要8島には各々に特徴あるエネルギーが流れていると言われます。ハワイ島のエネルギーを主観的に表現するとすればそれは、陰と陽のコントラストの激しさと、その激しい2極があった上での見事な調和、です。ハワイでは、冷たい真水と生暖かい海水とが交じり合う場所には強力なヒーリングエネルギーが宿ると言われていますが、ハワイ島はわたしにとってちょうどそんな場所のイメージです。大地と天空、火と水、海と山、湿度と乾燥、暑さと寒さ、破壊と再生、そういった2極を体験できる場所。そしてその先にあるのは、それらの見事なグラデーションであり調和です。万物から気(エネルギー)が放たれているのだとしたら、わたし自身もこの美しい島を構成するエネルギーの一部ということ。圧倒的な緑、美しく咲き誇る花々、鳥のさえずり、表情を変え続ける空、そしてそこに住む人々もまたそこに混じり合って、この島の見事なグラデーションを作り出しています。

皆さまが暮らす場所には、どんな気(エネルギー)が流れていますか?2023年が、今あるその場所、そして何よりもお一人お一人が、美しい調和とグラデーションで満たされる一年となりますよう心からお祈りしています。どうぞ良いお年をお迎えください。

夜明けのマウナロア

*マウナロア展望エリア(Mauna Loa Viewing Area)については今後変更する可能性も考えられます。最新情報を入手の上、安全第一でお出かけください。

トゥシグナント 知佐子 

東京都出身、2013年米国に移住。オアフ島、ロサンゼルス、ポートランド(OR)を経て現在はハワイ島ヒロ在住。🌺絵画と数秘のサイトmanaarthawaii.com 🌴ハワイ島ヒロAirbnbのサイトairbnb.com/h/hilosunrisesuite 

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