夕焼け新聞6月号掲載『伝えたい思い』

ハワイ島からブログ発信中。こちらは米国オレゴン州月刊コミュニティ紙『夕焼け新聞』2024年6月号に掲載されたコラムの全文です。

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5月1日は「レイデー」と言って、ハワイの大切な文化であるレイを祝う日。皆さんもきっと、一度は目にしたことがあるのではないでしょうか?色とりどりの花や木の実や貝などでできた、首からさげる輪っか状の飾り。Lei(レイ)という言葉は“首飾り”の他に、“愛しい人”“絆”などの意味があり、愛や尊敬、祝福や感謝の気持ちを込めてハワイでは卒業式や結婚式など様々な場面でレイを贈り合います。ハワイにとってなくてはならない文化の一つです。

そんなレイデーを祝す地元のイベントで、フラを踊る機会をいただきました。フラのレッスンで先生から繰り返し言われることは、「フラはストーリーを伝える踊りだ」といこと。ただ振り付け(形)を覚えるだけでは不十分で、先ずはハワイ語の歌詞の意味を知り、その歌の内容や描写されている情景をありありと自分の頭の中でイメージできるようにならなければいけない、と。こうやってフラを通しても、古くから人というのは何かを「伝える」「伝えたい」生き物なのだな、ということを思い知らされます。

今やSNSなどを使って誰もが「伝える」手段を容易に得られる時代です。多種多様な人々による情報が溢れている環境の中で我々は逆に、「インフルエンサーでもない自分が何かを伝える意味なんてあるのだろうか?」「きっとこんなことは既に誰かが伝えているだろう」「これを伝えることで誰かに批難されるのではないか」などと、私自身も含めて、思いや考えを伝えることに対する躊躇の気持ちが芽生える場面もまた増えてきているように感じます。

動物行動学を専門とする公立鳥取環境大学の小林朋道先生によると、生物の本能の中には非常に強固で「絶対にはずしてはいけない」という種類のものと、ある程度変えられるものがあるのだそうです。そんな中、「五感を使って気持ちを伝える」という本能は、人間が決してなくしてはいけない本能のうちの一つなのだとか*。

「五感を使って」とはどういうことかと言うと、今でも重要なお願いや謝罪、大事な契約の際などはオンラインではなく対面で相手と接する、ということを例として挙げていらっしゃいます。「あなた方に熱意を持っています」「誠実に対応しています」とどれだけ文字で書いても限界があり、実際に出向いて対面で相手の五感に感じさせなければ伝わりにくい。そしてその背後にあるのは、「エネルギーを使う」ということだ、と先生は説かれます。自分のためにこれだけのエネルギーを使ってくれるのであれば、信頼していいのではないかと相手は思う、といった具合に。

「伝える」ことの背景にあるのは「エネルギーを使う」こと。確かにその通りだな、と思います。伝わっているのは単に情報だけではなく、伝える側のエネルギーも共に伝わる。伝える側の表情であったり、表現の仕方やトーン、ジェスチャーなどを通してその方の誠実さや情熱といった、つまりは「エネルギー」が受け手に届きます。これは、文章も踊りも絵画も、表現と呼ばれるもの全てに当てはまることでしょう。個人的な経験から言うと、伝えたい「情報」は時と場合によっては誤った、もしくはこちらの意図とは異なった受け取り方をされることがあるけれど、「エネルギー」の方はよりダイレクトに受け手に届くな、という印象を持っています。

嬉しいことにフラを舞ったレイデーイベント翌日の地元紙の一面には、我々のフラグループが踊っている写真が掲載されました。後日、紙面を見たメンバーの一人から声をかけられました。「新聞の一面に載っていたね!おめでとう。あなた、とてもきれいに踊っていたものね。きっとハワイの神様も喜んでくれたのね」なんて、これ以上ないぐらいの賛辞をいただきました。

Hawaii Tribune Herald, May 2, 2024

私は「歌詞を伝えるフラが踊りたい」と練習を重ね、イベント当日は今の自分にできる限りの舞いを披露し、その様子を記者の方が写真で伝え、新聞に載り、記事を見たフラ仲間がその感想をまた私に言葉で伝えてくれたわけです。自分が出した「エネルギー」が、まわりまわってまた自分に返ってきたことを実感できる出来事でした。

こんな体験からも、誠実に、思いを込めて何かを伝えることの大切さをひしと感じています。そうすればきっと届く人にはそのエネルギーは伝わり、そこから何かを受け取ってくれる人がいる。だから、「どうせ自分は」などと思わずに、躊躇せずに伝え、発信してゆきたい。そして何よりも「どんなエネルギーと共に伝えるか」を大切にしながら。ハワイの優しくあたたかいエネルギーを感じていただけるような文章を書いていきたいな、と心から思っています。

さて、新聞に掲載いただいた写真に写っている瞬間の振り付けは、ハワイ語でManu(マヌ)、鳥を表している動きです。果たして我々の鳥は伝わっていますでしょうか?

*「人間がなくしてはいけない本能は五感を使って気持ちを伝えること」

https://www.adeccogroup.jp/power-of-work/171

トゥシグナント 知佐子 

chisakolife.com

東京都出身、上智大学文学部哲学科卒。2013年米国に移住。オアフ島、ロサンゼルス、ポートランド(OR)を経て現在はハワイ島ヒロ在住。ハワイ島ヒロ自宅でのAirbnb airbnb.com/h/hilosunrisesuite 

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