夕焼け新聞3月号掲載『Pick More Daisies』

ハワイ島からブログ発信中。こちらは米国オレゴン州月刊コミュニティ紙『夕焼け新聞』2024年3月号に掲載されたコラムの全文です。

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昨年の4月から週に一度、ボランティアで訪問させていただいている一人の日本人のご婦人がいらっしゃいます。お宅へお邪魔して、毎回1時間ちょっと日本語でおしゃべりをします。30代の頃に日本からアメリカへ渡ってこられたこのご婦人は、今年の1月1日に満100歳のお誕生日を迎えられました。私自身がちょうど50歳なので、自分の倍の時間を生きてこられた人生の大先輩。幼い頃の思い出、第二次世界大戦下の恐怖の日々、戦後の日本、その後アメリカへ渡って来られた当時の体験など、貴重なお話を聞かせていただくのが毎回とても楽しみです。中でも幼い頃のエピソードはとても鮮明で、お話を伺っていると、子供の目線に見えていた当時の日本の様子が私の頭の中にも生き生きと思い浮かんでくるほどです。

ハワイ島ヒロへ越してから始めたホスピスボランティア。細々とですが途切れることなく続けています。ハワイという土地柄もあると思うのですが、日本語でのコンパニオンシップという内容でボランティアをさせていただける機会が想像以上にあり、日本語という自分自身のアイデンティティを活かしながら誰かのお役に立てるということは、私自身にとって大きな恵みになっています。

日本語で患者さんと接していると特に、目の前にいる患者さんと自分自身を重ね合わせてしまうことがあります。自分は人生の最期をどう迎えるのだろう?アメリカにいるのかな?ハワイかな?最期は母国語しか出なくなると聞くことがあるけれど、自分もそうなるのかな?等々。

ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、アメリカ合衆国ケンタッキー州で暮らしていたナディーン・ステアという方が85歳の時に書いた“If I had my life to live over(もしも人生をやり直せるなら)”という、とても素敵な一遍の詩があります。85歳のナディーンおばあちゃんが教えてくれる、人生で本当に大切なこと。心にすっと響く、とても美しい詩です。ここでは詩の最後の部分を抜粋して掲載させていただきますが、興味のある方は是非インターネットで見つけていただき、全編通しで味わってみてください。

If I had my life to live over, I would start barefoot
earlier in the spring and stay that way later in the fall.

If I had it to do again, I would travel lighter next time.
I would go to more dances.
I would ride more merry-go-rounds.
I would pick more daisies.

もしも人生をやり直せるなら

春はもっと早くから、そして秋はもっと遅くまで

素足で過ごそう。

もしもう一度やり直せるなら

今度はもっと身軽に旅に出よう。

もっとたくさん、踊りに行こう。

もっとたくさん、メリーゴーランドに乗ろう。

もっとたくさん、デイジーを摘もう。

人生折り返し地点を通過し、ついつい先のことを考え過ぎたり時には不安になってしまう自分がいます。でもきっと、そんなことに意識が向いていると、目の前に小さく美しく咲くデイジーの花に気付くことなく通り過ごしてしまうことでしょう。詩の中で、ナディーンおばあちゃんはこうも詠っています。

「ごらんのとおりわたしは、ごくふつうの人間です。いつだって、どんなときでも、コツコツまじめに生きてきました。あぁ、そんなわたしの人生にも、生きる喜びを感じた瞬間がいくどかありました。もしも人生をやり直せるなら、そんなひとときが、たくさんほしい。本当にそれだけで、あとはなにもいらない。」

ホスピスボランティアを通して感じることは、人生終盤に思い返すことというのは、その方その方にとっての「生きる喜びを感じた瞬間」なのだなぁ、ということ。子供の頃、庭に生えた大きな無花果の木に登って実を取ってあげるとお母さんがとても喜んでくれた、というお話や、旦那さんと恋人時代に手を繋いで湖でアイススケートをした、といったお話。患者さん方はそんな、その方にとってのかけがえのない「生きる喜びを感じた瞬間」のエピソードを、何度も何度も繰り返しお話してくださいます。

100歳のお誕生日を迎えられたご婦人から、訪問の度に別れ際いただく一言があります。それは、「旦那さんを、大事にね」です。人生の先輩からいただく大切な言葉をかみしめながら、人生後半、目の前に咲くデイジーを大事に摘みながら日々を歩んでいきたいと思っています。

少女時代のモノクロのお写真を元に描かせていただいたバースデイカード

トゥシグナント 知佐子 

chisakolife.com

東京都出身。上智大学文学部哲学科卒。2013年米国に移住。オアフ島、ロサンゼルス、ポートランド(OR)を経て現在はハワイ島ヒロ在住。ハワイ島ヒロ自宅でのAirbnb airbnb.com/h/hilosunrisesuite 

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