夕焼け新聞5月号掲載『レインボー・フォールズ』

レインボー滝(ハワイ州)黒島健司氏撮影

米国オレゴン州月刊コミュニティ紙『夕焼け新聞』2022年5月号に掲載されたコラムの全文です。 ********************************* ***********

風薫る五月。街中が瑞々しい新緑の緑色に覆われ、キラキラと輝く木漏れ日の下、爽やかな風を感じながら歩いたそんなノースウエストの5月を思い出します。ポートランドに暮らしていた頃も今と変わらず年間通してアウトドアを楽しんでいましたが、中でもこの時期はハイキングに最適な季節。オレゴン州やワシントン州でトレイルを歩いていると、たくさんの美しい滝との出会いがありました。今日はそんな滝のお話をしてみたいと思います。

現在わたしが暮らしているハワイ島にも数々の滝があります。そしてそれらの滝は島の東側(わたしが暮らしているヒロの街が位置する側)に集中しており、大小合わせて2000の滝があるとも言われています。ハワイ島東側の玄関口ヒロの街から最もアクセスしやすい場所にある滝と言えばレインボー滝。ヒロのダウンタウンから車で5分ほどの場所、ワイルク川上流に流れる滝です。滝の後ろ側には洞窟が口を開けていて、この洞窟には女神ヒナが住んでいたという伝説が残っています。そして、その名の通りよく虹が架かる滝として知られています。レインボー滝という名前の由来は単純に考えればきれいな虹が頻繁に架かる滝だからだろうと思いがちですが、単にそういう訳ではなく、その奥にはこのレインボー滝ならではの特徴が隠されていた、ということを最近知りました。

先に記したようにハワイ島東部には2000を超える滝があるということですが、これらの滝にはほぼ例外なく朝日が差込みます。いずれの滝も朝日が昇る東側を向いて流れているからです。そのため、晴れた日の朝であればどの滝であっても角度によっては必ず虹は見られ、レインボー滝だけが特別に虹が架かりやすい滝という訳ではないのだそうです。ではなぜこの名前がついたのか?それは、他の滝では見られないような虹の架かり方に特徴があるのだとか。通常、滝を左右に横切るような形で虹は現れますが、レインボー滝では虹が滝と共に空から落ちてくるように縦方向に架かることがあるのだそうです。さらに水量が多いと滝壺に落ちる水しぶき全体に虹が架かることもあるそうで、そんな特別な虹の架かり方から「レインボー・フォールズ(虹の滝)」という名前がつけられたということ。

ノースウエストであれハワイであれ、トレイルを歩いているとどこからか勢いよく流れる水の音が聞こえ、その音がだんだんと近づいてきたかと思うと目の前に荘厳な滝が現れた時の喜びは格別なものがあります。虹も、空に架かった大きな虹を見かけると何か良いことが起こる兆しのようなワクワクとした嬉しい気持ちになります。なぜ人はこんなにも滝や虹に惹かれるのでしょうか?オレゴンのマルトノマ滝はいつ行ってもたくさんの人で賑わっていましたし、虹が架かるとどこからともなく人々が家の外に出て空に向かって携帯のカメラを向けている様は日常的に虹がよく架かるハワイでも見られる光景です。どうやら滝や虹を愛でる心は世界共通、人としての心理のようです。

マルトノマ滝(オレゴン州)

滝と虹とに共通する美。ひとつには「出会いの美」とでも言いましょうか、ふいに現れるその偶然性のようなものが挙げられるかと思います。太陽の光が雨粒や水滴にぶつかりその反射や屈折によって生まれる虹は、いつどこで現れるか分かりません。偶然にそこに居合わせた者だけがその美しさに触れることができます。滝もいつも決まって同じ姿でその場にあるとは限りません。水量の増減によってその姿は幾様にも変化します。人間の力ではどう頑張ってもプランを立てることができない、コントロール不可能なもの。予期せぬところでふいに現れる喜びと予測不可能な美しさ。これは滝と虹とに共通してあるひとつの美の形のように思います。そしてそこにはまた「消えてなくなってしまう」という共通性が見られます。空にかかった大きな虹はきれいな姿を現したかと思うと、数分も経てばすっかり姿を消してしまいます。滝もまた、乾燥した天候が続き水量が減れば姿を消してしまいます。それは、散りゆく桜を愛でる心、「無常観」の美意識にも繋がります。

大自然に囲まれたノースウェスト。新緑の清々しいエネルギーを感じながら滝との出会いを楽しみに山歩きなどいかがでしょう。そして、次回ハワイ島を訪れる機会がございます際には是非、朝日が昇るタイミングを見計らって島の東側に位置する滝まで足を運んでみてください。朝日に照らされた滝に美しい虹が架かる姿をご覧いただけるかもしれません。

※写真提供

ハワイ島ヒロ在住、黒島健司氏。ブログhttps://www.hula-hawaii.net/とお宿https://www.airbnb.jp/rooms/46385257

トゥシグナント知佐子

東京都出身、2013年米国に移住。ハワイ州オアフ島、カリフォルニア州ロサンゼルス、オレゴン州ポートランドを経て現在はボストン出身の夫、オレゴンの森の中で生まれたコリーのメス犬、ローカルボーイの子猫2匹と共にハワイ島ヒロ在住。https://chisakolife.com

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