夕焼け新聞11月号掲載『「おひとりさま」の次の時代』

“He Hali’a Aloha No Lili’uokalani”にて

米国オレゴン州月刊コミュニティ紙『夕焼け新聞』2022年11月号に掲載されたコラムの全文です。

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ハワイ王国最後の国王であり唯一の女王であったリリウオカラニ女王のお誕生日(1838年9月2日)を祝うイベント“He Hali’a Aloha No Lili’uokalani(女王の大切な思い出)”が、去る9月10日、ハワイ島ヒロ湾を見渡すリリウオカラニ・ガーデンにて3年ぶりに開催されました。当日は晴天に恵まれ、真っ青な空の下で地元ヒロのたくさんのハラウ(フラスクール)がチャントを捧げ、レイ(生花で作った首飾り)を捧げ、フラの踊りを捧げ、リリウオカラニ女王もさぞ天国でお喜びであったことと思います。

ところで、最近知って驚いたことがあるのですが、日本では古来より生誕の日を祝うという風習はなく、現在のように人の誕生日を祝うようになったのは明治以降に海外の風習が伝わってからのことなのだとか。つまり、長い日本の歴史の中で日本人が誕生日を祝うようになったのはほんのここ150年程度のことだそう。その反面、日本の神道では人が亡くなると節目の年に式年祭というお祭りが執り行われます。式年祭とは、仏教でいう年忌法要にあたるもので、神道では五十年祭(仏教でいうところの五十年忌)を区切りとして終わるのだそうです。古来より日本で育まれてきた伝統としては、人の「生」ではなく「死」(とその後)を祝ってきた、ということ!現代の感覚からすると、それってちょっと衝撃的ではありませんか?「死を祝う」と言うとなんだか聞こえが悪いですが、神道では祖先の霊を「守り神」と考えるので、つまり死とは故人が霊となり守り神となった日、という考えに基づくわけですね。だとするとたしかに祝うべきことのような気もいたします。

一方、日本では「おひとりさま」という言葉が定着して久しいですが、一人暮らしのいわゆる「おひとりさま」は年々増加傾向にあるのだそうです。ところが今やインフレが進み、そうそう「おひとりさま」で悠々と自由気ままにというわけにもいかなくなる時代に突入の気配がして参りました。これは決して日本に限った話ではありません。

わたしはハワイ島ヒロに越してからホスピス・ボランティアをさせていただいています。みなさんは「ホスピス」という言葉にはどのようなイメージをお持ちでしょうか?ちょっとお世話になりたくないようなネガティブなイメージですか?それとも最期が近づいた人々が安らかに逝くことのできる場所、というポジティブなイメージでしょうか?

ホスピス・ボランティアとして私が実際に行っている活動を少しだけご紹介させていただくと、患者さんのお宅へお伺いして簡単なランチをご用意したり、患者さんとおしゃべりをしたり、お話することも難しいような場合は音楽を流して一緒に聴いたり、患者さんの故郷のお国言葉の映像を観たり、そんなことをしていますが、メインとなるのは「患者さんの側に居る(コンパニオンシップ)」ことです。これまで担当させていただいた患者さんはいずれもご高齢の方々。患者さんにとってはこれまで歩んでこられた長い人生のほんの一部、しかも最後の最後のほんの短い時間をご一緒させていただく、という貴重な体験をさせていただいています。

ホスピス・ボランティアを通して感じることは、ポジティブな意味合いでの見ず知らずの人(例えばそれは私がやっているようなボランティアかもしれません)に看取ってもらう時代、血縁ではない共同体の時代、そんな時代がやってくる気がしてなりません。これは、家族が暮らす日本を離れ、今現在日本以外の場所で暮らす私自身にとっても決して他人事でありません。

死を忌み嫌ったり何か触れるべきではないもののように遠ざけたりするのではなく、望んだ通りになるならないはコントロールできないものであることは承知の上で、死もまた生の一部として自らしっかりと向き合うべきもの。「ホスピス」や「死」という言葉を聞いて、ちょっとでも「そんな縁起でもない」という気持ちになったり耳を塞ぎたくなったりする方が減り、もちろん軽い感じとは言いませんが、何かもっと身近に向き合うべき人生の大切な一部として人々の掌に乗る日が遠からず来るといいな、と思います。

わたし個人にとっては、「こんな仲間がいるんだ」「こんな最期もあるんだ」ということを「知る」ということが先ず第一歩のような気がしています。死が怖いのは、体験したことがないのはもちろん想像することすらできないことだから。もちろん、「死」そのものは生きているうちに体験することはできませんが、人生の最期の迎え方は、人生の先輩方が自らの生命を終える時にわたしたちにその姿を見せてくださいます。ホスピスはわたしにとって、そんな学びの場でもあるのです。

トゥシグナント 知佐子 

東京都出身、2013年米国に移住。ハワイ州オアフ島、カリフォルニア州ロサンゼルス、オレゴン州ポートランドを経て現在はハワイ島ヒロ在住。ハワイ島ヒロの自宅1階を全面改装したお宿をAirbnbにて運営中。https://airbnb.com/h/hilosunrisesuite 

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