夕焼け新聞10月号掲載『ハワイ島で叶った夢』

米国オレゴン州月刊コミュニティ紙『夕焼け新聞』2021年10月号に掲載されたコラムの全文です。

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ポートランドに住んでいた頃、ずっと挑戦してみたかったけれどできなかったことがあります。それは乗馬。ポートランド郊外(Estacada)のMilo Mclver State Parkへハイキングに行くと、同じトレイル内を乗馬で楽しんでいるグループに何組もすれ違っては乗馬への思いを膨らませていました。

乗馬は以前オアフ島に住んでいた頃に目覚めて、と言っても観光客向けの2時間ほどのコースではありますが、何度か体験しました。東京からハワイを訪れていた友人と共に、オアフ島のクアロアランチで体験した乗馬が最初でした。馬の可愛さと馬上の高さから見渡す景色の素晴らしさに魅了され、「乗馬習いたいな」と言ったところ友人から「車の運転の方が先じゃない?」との指摘を受け、そりゃそうだと当時まだ持っていなかった運転免許を取得したのでした。免許が取れると早速、オアフ島北部にあるガンストックランチまで勇敢にも一人で運転をして乗馬体験に行ったりもしました。ハワイというと常夏の島なだけあってビーチのイメージが先行すると思うのですが、このようにどの島にも広大なランチ(牧場)がいくつかあって、パニオロと呼ばれるハワイアンカウボーイ達が今も現役で仕事をしています。

そんなわけで数年越しの乗馬への夢を実現させるため、実はポートランドではいくつかの乗馬学校へ問い合わせをしたこともあります。しかし、いくら屋外でのレッスンとはいえコロナ渦ということもあってか「今のところ新しい生徒さんは受け入れていません」とか「現在子供さんしか受け付けていません」というツレない対応ばかりで実現することはありませんでした。乗馬は情操教育にも良いとされているので、もしかしたらどこの乗馬学校も子供だけで定員になってしまうのかもしれませんね。

それが、この度念願叶ってここハワイ島にて乗馬のプライベートレッスンを受ける機会に恵まれたのです!先生はご自宅にアリーナ(馬場)をお持ちで、息子さん、娘さん、お孫さんまで親子三代で馬を中心とした生活を送っていらっしゃるパニオロファミリー。先生自身元々は馬の調教を専門にされていたそうですが、リタイア後は馬よりも人の教育の方に重心を置かれているのだとか。

わたしが練習で乗らせてもらっている馬の名前はドリー。ドリーも生後6ヶ月の頃から先生が調教された馬だそうで、とても穏やかな優しい馬です。観光客向けの乗馬体験では「馬に乗る」という動作ひとつとってもステップ台が用意されていましたが、レッスンでは台なしで馬に乗るところからスタートです。結構な高さのあるドリーの胴体にステップ台なしで果たして一人で乗れるのか。恐る恐る鐙に左足をかけ、左手でドリーのタテガミと手綱を掴み、先ずはまっすぐ上にジャンプ、その後大きく右足を後ろに振り上げてまたぐ。先生の指導通りに行うと意外にもあっけなく騎乗することができ、気分上々でレッスンはスタートしました。そして数回のレッスンでもう、自分一人で馬をコントロールしてアリーナ内を常歩(ゆっくり歩く)から速歩(パッカパッカと少し速いスピードで歩く)で右へ左へと馬を誘導しながら歩けるようにまでなりました。次はいよいよ駆け足に挑戦と先生からは言われており、進行の速さに自分でもちょっと驚いています。

いつもレッスンのお相手をしてくれるドリー

観光客向けの乗馬体験と、実際の乗馬との一番の違い。それは、馬のスピード云々以前に「馬をコントロールするか否か」だと思います。乗馬体験では自分で馬をコントロールする必要がありません。よく調教された馬が我々を乗せて歩いてくれる、我々はそんな馬に基本的には乗っかっているだけです。ですが実際の乗馬は、馬のコントロールをしなければならない。発進から、右に曲がる、左に曲がる、スピードを上げる、下げる、止まる、こちらがすべて指示を出さないと馬はどうしていいのかわからず直立不動になってしまいます。そして馬はとても繊細な生き物。こちらの精神状態を見事なほどに察知してきます。こちらが「怖い」と感じた途端、馬も一緒に固くなっているのが分かります。

そんな本当の乗馬を初めて体験してみて思ったこと。それは、もうすぐ2歳になる犬のしつけをした経験が乗馬に活かされている、ということです。犬もまたとても賢く繊細な動物。まるで鏡のようにこちら(飼い主)の精神状態を反映してくれて、慣れるまではちょっと辟易するほどでした。堂々とした態度、ゆったりとした気持ちで接すると犬はこちらの要望に応えてくれますが、馬も同じだと感じます。また、こちらからの指示をはっきりと出さないといけない点も馬と犬は同じようです。と、ここまで来てはたとこれ、どこか身に覚えのある感覚?そう、意外ではあるのですがこれ、マネージャーとして四苦八苦して働いていた頃に身につけようとしていた感覚と同じです。気になって調べてみると、こんな記事を見つけました。

乗馬がビジネスマン、中でもエグゼクティブ層の趣味に向いている点として、リーダーシップや観察力が養われることが挙げられます。馬は「人を見る」と言われます。自信がない態度で接すると馬は思うように動きません。暴れている馬でもベテランが乗るとおとなしくなることが多いのは、ベテラン騎手は技術と心で馬をリードできるからです。また、馬の状態を常に観察して、今どのような気持ちでいるのかを把握するのも大切です。その馬の気持ちに合わせて対応を変えることで、人馬一体の状態がつくれます。これらのことは、部下の管理に通じるものがあるでしょう。

J PRIME ウェブサイトより 

馬といえども、犬といえども、人といえども、生きているもの、心あるものの本質は同じなのかもしれません。乗馬を通し、ペットを通し、人として成長し続けていくことの肝要さを忘れずに、とハワイ島で叶った夢はわたしに教えてくれています。

思いがけず、眞子さまと同ページに写真掲載😁

トゥシグナント知佐子

東京都出身、2013年米国に移住。ハワイ州オアフ島、カリフォルニア州ロサンゼルス、オレゴン州ポートランドを経て現在はボストン出身の夫、オレゴンの森の中で生まれたコリーのメス犬、ローカルボーイの子猫2匹と共にハワイ島ヒロ在住。ブログhttps://chisakolife.comにてハワイ島の暮らし、国際結婚、犬猫との生活、自らの絵画制作などについて執筆中。

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