夕焼け新聞10月号掲載『10年の軌跡(後編)』

ハワイ島からブログ発信中。こちらは米国オレゴン州月刊コミュニティ紙『夕焼け新聞』2023年10月号に掲載されたコラムの全文です。

************************************************

私が日本からハワイ(オアフ島)へ移住したのが2013年の10月、ちょうど10年前のことです。移住当初は、異国の地での慣れないレストラン経営に無我夢中の毎日でした。結局レストランは1年半足らずで閉店。その後、新しい仕事を見つけ心機一転ハワイでの生活を軌道に乗せたと思ったら、今度は日本から連れ添った夫との離婚。振り返ると、あの時期は私の人生の大きな転換点でありリセット期でもあったように思います。

学生から社会人となり、仕事をし、結婚をし、ハワイ移住後もとにかく目の前のことに精一杯取り組みながら歩んできましたが、あのハワイでの倒産&離婚という人生の転換点以前の自分は、今になってみると目や意識は常に外側を向いていたな、と思います。正直、じっくり自己内観するような余裕もなかったのが現実ではありますが。それが、ハワイという場所で一度大きなリセットを経てその後、現在の夫と出会い再婚。再婚後は住む場所はオアフ島からカリフォルニア州、オレゴン州、そしてハワイ島へと移り、その間も様々な出会いや出来事がありました。途中コロナによるロックダウンも含めたこの期間を包括して言えることは、これまでの人生の中で最も自分自身と向き合うことのできた時間だった、ということです。そしてそれは今も現在進行形で続いています。

「比較神話学」という分野で大きな功績を残したジョーゼフ・キャンベルという神話学者がいます。彼は世界各地古今東西の神話を研究し、そこにある共通した物語構造を見出しました。ジョージ・ルーカスの「スター・ウォーズ」をはじめ、「マトリックス」や「ロード・オブ・ザ・リング」といった映画史に残る大作はいずれもこの、ジョーゼフ・キャンベルの理論(共通した物語構造)を踏襲して創られていると言います。

私はジョーゼフ・キャンベルの残した言葉がとても好きで、前に進めなくなって立ち往生してしまいそうな時など特に力をもらいます。何が好きかと言うと、神話を通した彼の「人間」についての深い考察です。神話は人間存在を如実に表している、とキャンベルは考えました。神話というのは物語です。物語それ自体は真実ではないけれど、その本質は真実を表している。つまり、古今東西で語られてきた神話の根底にある本質というものを探ると、そこに我々人間に共通する本質が見えてくる、ということ。神話は人間の共通理念とも言えます。そこの部分に深く賛同するからこそ、時にとても衝撃的でもある彼の言葉が私にはとても深く響きます。

中でも最近ハッとさせられた言葉がありました。

人々はよく、われわれは生きることの意味を探っていると言いますが、人間がほんとうに探求しているのは、たぶん生命の意味ではありません。
人間がほんとうに求めているのは、<いま生きているという経験>だと思います。
純粋に物理的な次元における生活体験が、自己の最も内面的な存在ないし実体に共鳴をもたらすことによって、生きている無上の喜びを実感する。それを求めているのです。

“I don’t think [the meaning of life] is what we’re seeking. I think [it’s] an experience of being alive, so that our life experiences on the purely physical plane will have resonances within our own innermost being and reality, so that we actually feel the rapture of being alive.”

「本当の自分が知りたい」「自分の使命ってなんだろう」。遅かりし自己探求の中、そんなことをここ数年模索してきました。そんな、「本当の自分」や「自分の使命」を求めてたくさん学んでたくさん考えた数年があったからこそ、今改めてこのキャンベルの言葉にハッとさせられるのだと思います。私には必要だったその段階を踏んで今、ほんとうに求めているのは<いま生きているという経験>、という箇所が心と身体に染みるように入ってきます。

最後に、ジョーゼフ・キャンベルの「Follow your bliss. (あなたの至福を追求しなさい)」を原文で掲載させていただきます。今ある状況・環境を受け止めつつ、一つ一つ扉を開け、至福の方向に行動を積み重ねていく。これからも続いてゆく人生の旅路の中、以前よりも鮮明に見えるようになった「自らの至福」にそっと寄り添うように歩んでゆきたい。キャンベルからのメッセージを、今現在の私はそのように受け止めています。

“Follow your bliss.
If you do follow your bliss,
you put yourself on a kind of track that has been there all the while waiting for you,
and the life you ought to be living is the one you are living.
When you can see that, you begin to meet people who are in the field of your bliss,

and they open the doors to you. I say, follow your bliss and don’t be afraid,

and doors will open where you didn’t know they were going to be.
If you follow your bliss, doors will open for you that wouldn’t have opened for anyone else.”

― Joseph Campbell


参考文献:Joseph Campbell, The Power of Myth

ハワイ島ヒロの自宅から望む朝日

トゥシグナント 知佐子 

chisakolife.com

東京都出身、2013年米国に移住。オアフ島、ロサンゼルス、ポートランド(OR)を経て現在はハワイ島ヒロ在住。数秘セッションと絵画制作 マナアートハワイ manaarthawaii.com・ハワイ島ヒロ自宅でのAirbnb airbnb.com/h/hilosunrisesuite 

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です