夕焼け新聞9月号掲載『ハワイ島ヒロへ』

米国オレゴン州月刊コミュニティ紙『夕焼け新聞』2021年9月号に掲載されたコラムの全文です。

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7月7日の七夕の日、夫と愛犬と共にハワイ島のヒロという街に引越しをしました。今後はヒロよりコラムの連載を続けさせていただけることとなり、短い間でしたが大切な時間を過ごすことのできたポートランド、そしてノースウエストとのご縁が続くことを心から嬉しく思っています。

引越し当日、いつものようにハワイ島ヒロ空港行きの飛行機の座席は進行方向向かって右手の窓側を選びました。ヒロの街が近付くにつれ見えてくる、雲の上に顔を出したマウナケアとマウナロアという2つの山を眼下に見渡すことが、ハワイ島へ到着する際の自分にとっての一つの儀式のようになっているからです。マウナケア山は世界で一番星空がよく見える場所とも言われており、各国の天文台が設置されている山です。標高4,169メートル。ちなみに富士山の標高が3,776メートル、オレゴン州フッド山が標高3,429メートル、ワシントン州レーニア山が標高4,392メートル、カリフォルニア州シャスタ山が標高4,321メートル。各地の名だたる高山と肩を並べる高さを誇る山です。一方、マウナロア山はその大きさ、体積で群を抜いています。なんとこのマウナロア山、ハワイ島の面積の半分を占める広大さです。世界で一番体積の大きな山なのだそうです。

日本に住んでいた頃、高台にある神社の境内や新幹線の車窓から富士山が見えるとつい手を合わせたりお辞儀をしたりして拝むような気持ちになったものです。そしてその気持ちはカリフォルニアでシャスタ山を、オレゴンでフッド山を目にした時も変わりませんでした。いずれの山にも崇高な美があり、畏敬の念を抱かせる力が宿っています。山信仰と言われるものが世界各国に存在するのも納得です。ここ、ハワイ島の山も例外ではありません。最近では2018年に噴火したキラウエア火山の火口には「ペレ」という女神が住むと言われており、ペレにまつわる神話は数多く存在しています。

さて今回、ポートランドからハワイ島への引越しは、家具などすべての家財道具をコンテナに積み込んで一気に送ることにしました。そのため、コンテナがハワイ島ヒロの家に着くまでの約3週間、身の回りの必要最低限のもので暮らすところから我々のハワイ島ライフはスタート。必要最低限の服に必要最低限の食器と調理器具、そしてエアマットレスに折りたたみデスクとビーチチェア。ガランとした家具のない家の中でまるでキャンプをしているかのような3週間でしたが特に困ることはありませんでした。なければないでないなりに暮らせる、ということが判明した出来事でした。そしていよいよ、大きなコンテナがはるばるポートランドからヒロの我が家へと到着し、重たい扉を開けると中にはぎっしりと積まれた家具とダンボール箱。最初こそ「こんなにたくさんの物に囲まれて暮らしていたのか」とダンボールの山を前に呆然としたものの、いざ家具を設置して荷をほどき愛着のある小物などを定位置に配置していくとあっという間に「我が家」の空気感が広がりました。そう、必要最低限の暮らしにも瞬く間に慣れましたが、逆もまた然り。たくさんの物たちに囲まれた元の暮らしにすっかり逆戻りです。

このようにして始まったハワイ島での暮らし。我が家も高台に位置していますが、ハワイ島は島全体が海に向かってなだらかに傾斜しており、まさに山の一部に暮らさせてもらっていることを日々感じています。「島全体が山」もしくは「山が島」と言ってもいいハワイ島。キラウエア山に住む神ペレの力が宿る島で、これからどんな驚きが待っているのかとても楽しみです。神聖な山からのパワーを感じながら、少しは物を少なくしてスッキリと暮らしてみたいような気もするものの、やはり家の中では愛着のある物たちに囲まれて暮らしたい気持ちには勝てそうにありません。

トゥシグナント知佐子

東京都出身、2013年米国に移住。ハワイ州オアフ島、カリフォルニア州ロサンゼルス、オレゴン州ポートランドを経て現在は、ボストン出身の夫、オレゴンの森の中で生まれたコリーのメス犬、ローカルボーイの子猫2匹と共にハワイ島ヒロ在住。ブログhttps://chisakolife.comにて、ハワイ島の暮らし、国際結婚、犬猫との生活、自らの絵画制作などについて執筆中。

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